将来プロのチアリーダーになりたいと考えている方、今回は特にバスケットボールBリーグのチアリーダーを目指している方に向けて、「求められる力」について書きました。
<目次>
- 忘れてはならない、チアの本質とは
- 持続力こそがプロの証「基礎体力と自己管理能力」
- 点ではなく“線”で魅せる―プロが持つ「場面対応力」
- 空気を読んで瞬時に動く「切り替え力と即応性」
- まとめ:プロのチアリーダーに必要な3つの力
1. 忘れてはならない、チアの本質とは
「もっとダンスが上手くなりたい」
「もっときれいに、華やかに見せたい」
そんな思いから、日々スキルや容姿に磨きをかけるチアリーダーは多いと思います。
これらはプロとして当たり前、そして必要な努力です。
しかし、長年現場で指導してきた中で、どうしても伝えたいことがあります。
それは、“応援とは何か”という本質への理解が、まだ十分に深められていないということです。
ダンスや見た目は、あくまで「手段」にすぎません。
会場でチアリーダーに求められるものは、場の空気を変え、人の心に火をつける「応援の力」です。
それは、選手に観客の期待を届け、ときには負けている試合の空気を変える。
応援が確かに届いて、無言だった観客が声を出し始めたり、観客がアイコンタクトを返してくれる瞬間に、その意味をきっと感じられるでしょう。
つまり、その場にいる人たちに力を与え、次のプレーや声援へつなげることこそが、チアリーダーの核なのです。
ダンスのスキルや声援、笑顔だけではなく、それらすべてを総合して、場の雰囲気そのものを変える力があって初めて、プロフェッショナルと呼べる存在になるのだと思います。
2. 持続力こそがプロの証「基礎体力と自己管理能力」
Bリーグのチアリーダーに求められるのは、一瞬の華やかさではありません。
1試合2~3時間を応援し続け、それを土日の連続で、時には水曜開催の試合も含めると週3回に渡り、全ての試合で安定したパフォーマンスを出し続ける力が必要です。
何度もコートに登場しながら、すべてのタイミングで笑顔・声・動きのクオリティを維持するには、体力・集中力・コンディション管理をする力が不可欠です。
プロのチアリーダーを目指すなら、「本番に向けて自分を整えること」も技術の一つ。
栄養、睡眠、ウォーミングアップ、喉や体のケアまで含めた日常の過ごし方が、表現の質を決めるのです。
一時的な“全力”ではなく、“いつでも良い状態”を出せる安定感。
それが、Bリーグチアリーダーに共通する必要な力です。
3. 点ではなく“線”で魅せる――プロが持つ「場面対応力」
Bリーグの試合は約2〜3時間におよび、チアリーダーが登場する機会はチームによっては10回以上になることも。
オープニング、選手入場、クォーター間、タイムアウト、ハーフタイム…それぞれの場面には意味があります。
プロを目指すなら、それらを「点」として考えるのではなく、1本の「線」としてつないで考える感覚が必要です。
たとえばタイムアウト。
あの数十秒間にチアリーダーが担うのは、単なる盛り上げ役ではありません。
選手たちが戦術確認をしている間、会場の熱気は一旦落ち着きを見せることも。
そんな時も、観客全体の一体感を保ちつつ、場合によっては空気を意図的に変える役割を担う。
一瞬のブレイクを、次の展開への助走として整える。それがチアリーダーのタイムアウトにおける役割です。
また、試合展開に対して、自ら空気の流れを読み取り、その場に必要なテンションを即座に選び取れる判断力も欠かせません。
コートで何が起きているのかを感じ取り、選手と観客をつなぐように動けるチアリーダーは、会場全体の空気をコントロールし、試合の流れを後押しする存在です。
試合は生きものです。
流れに寄り添い、ときには流れを変えながら、その場に必要な役割を果たすこと。
それが、プロのチアリーダーの場面対応力です。
4. 空気を読んで瞬時に動く「切り替え力と即応性」
Bリーグの試合は、予定通りに進まないことも多々あります。
点差が大きく開く試合、逆転劇が起きる試合、ブーイングが飛ぶ場面、感動的な勝利や悔しい敗戦……。
その時々で、会場の空気は目まぐるしく変化します。
そんな中で、プロのチアリーダーに求められるのが、「その瞬間に必要なものを察知し、即座に表現を切り替える力」です。
たとえば、盛り上げるべき場面なのか、それとも静かに見守る空気を作るべきか。
笑顔で声を届けるべきか、落ち着いた表情で余韻を支えるべきか。
その判断は、あらかじめ用意された振付や構成を覚えるだけでは対応できません。
トップレベルのチアリーダーは、空気の“温度”を読む力と、それに合わせて表現を調整する力を持っています。
たとえパフォーマンス中でなくとも、観客が気づかぬレベルで空間に変化を与え、流れを整えているのです。
また、急な機材トラブルや進行の変更が起きたときに、表情一つ変えずに場をつなげる力。
緊張が走る場面での立ち振る舞いや対応力。
そうした「即応力」と「判断の切り替えの速さ」も、プロとしての重要な能力のひとつです。
予定調和だけでは、観客の心は動かせません。
その場の流れを敏感に読み、瞬間的に自分を変化させられる人こそが、本当の意味での「会場を動かせるチアリーダー」です。
5. まとめ:プロに必要な3つの力
以上の様に、次の3つはプロのチアリーダーに必要な力だと言えます。
- 瞬間的な爆発力ではなく、「常に良い状態を出せる安定感」
- 応援やパフォーマンスを「点」ではなく「線」として構成できる場面対応力
- 試合展開と空気の変化を読み取り、即座に表現を切り替えられる判断力と柔軟性
チアリーダーは、ただ踊る人ではありません。
“応援という力”を通じて、会場を動かす存在です。
それは、選手や観客だけでなく、スポーツそのものの魅力を支える存在でもあるのです。
それができる人が、真にプロフェッショナルと呼ばれるチアリーダーだと、私は信じています。
▼このコラムを書いた人